狩猟で避けては通れないのが、
どうやって動物を殺すか という問題です。
狩猟で捕獲した動物の命を奪う時はどのような手段があり、どのような方法を用いるべきでしょうか。
私が知る限りの仕留め方と、実際の体験談をまとめます。
今回の記事は、見る人によっては嫌悪感を感じさせる可能性がかなり高いです。
閲覧はそれなりに耐性のある方のみにおすすめします。
※本気で書きました。この記事は5分で読めます。
箱罠に入ったアナグマを電気槍で仕留めた動画に合わせて公開予定です。
興味のある方はそちらもご覧ください。
生き物を殺す複数の表現とその必要性
動物を殺す時に使われる表現は多岐に渡ります。
〆る(しめる)、仕留める、止めさしなど、他にも複数の言い方があります。
命を奪う、いただく、とも言いますね。
ここでは「殺す方法」として紹介していますが、我々は必要に応じて表現を変えています。
なぜこれだけの言葉が存在するのでしょうか? それは…。
「殺す」ことを意味する言葉が多いのは、人が「殺す」ことに興味を持っているからです。
動物を殺すことに複数の言葉が設定されているのは、それだけ我々がそのことに対して心のリソースを割いているということです。
興味を持っていると言っても、殺すことを楽しんでいるという意味ではありませんよ。
鳥に興味を示さない文明は、鶏もカラスもカモもまとめて「鳥」と呼びます。
普段からテレビゲームをしない人は、ゲームは全てゲームです。
動物を殺すことに対して複数の表現を知り、使い分けることができる人は、それだけ命に対して深く考えたことがある人だと私は思います。
そこに年齢や立場は関係ありません。
動物の命を奪う上で優先すべきことは人によって違う
私たちは命を平等に扱うことができません。
優先すべき命も人によって違います。
私たちは毎日、多くの命に心を割いています。
その心は同じ人間に留まらず、他の動物へも向けられていますね。
動物園の可愛いパンダが亡くなれば心が沈みます。
頭の良いイルカやサルを目にすれば、そこに人に近い知性の欠片を感じます。
持論ですが、
人は自分に近い場所にある命であるほど強く執着し、あるいは葛藤します。
そして年齢、立場、育った環境などで、命に対して感じる重みや優先順位は変化します。
もし狼に育てられた少年がいたとしたら、その少年は人よりも狼が死ぬことを悲しむのではないでしょうか。
人間一人一人にとって、命の重さは決して平等ではありません。
命の重さの議論は争いの種でもある
もしも目の前の人があまりに自分の考えとかけ離れていたら…?
目の前の人間が理解のできない歪なものであると感じることもあるでしょう。
サイコパス、悪人、あるいは偽善者。
相互理解が得られない場合は、下手をすれば大きな争いに発展することもあるでしょう。
逆に人との違いを知り、それを許容できるなら。
全人類がそういった成り行きにまで考えが至れば、少しは世の中平和になるのかもしれませんが、簡単なことではないですよね。
これ以上は話が外れるので省略します。
猟師はなぜ動物を殺すのか、殺せるのか
猟師は狩猟を楽しんだり、野生の動物の肉を食べたり、田畑や人の環境を守るために動物を殺します。
猟師が動物を殺す理由については以下でも解説しています。
猟師は、狩猟免許を取得することで猟師と名乗れます。
車の運転手が車のプロと呼べるか微妙であるように、
猟師=その道のプロ というわけではないと私は思います。
考え方も取り組み方も人それぞれです。
とはいえ、猟師は猟師でない人に比べて動物の生き死にに近い場所にいることは間違いありません。
蚊やゴキブリ、ネズミを駆除するだけの人と比べ、猟師が殺す生き物は圧倒的に人間に近いところにいます。
猟師も普通の人間ですから、生き物を殺すことは気持ちの良いものではありません。
大型の鳥獣、鹿や猪の死は時に自分の死を連想させ恐ろしく、畏ろしく感じます。
アナグマやタヌキなどを殺すときは、身近にいるペットを殺してしまうような罪悪感に苛まれることもあります。
それでも、数をこなせばそういった意識は少しずつ薄れ、あるいは変化していきます。
多少なりとも殺すことへの感情の揺れが小さくなることは間違いありません。
その良し悪しについては置いておくとして。
命を奪い続けることは動物の死に慣れることであり、言い換えれば”殺しに慣れていく”ということでもあるのです。
ただし、
感情が揺れないからといって、心が冷たいということではありません。
猟師が動物の命を躊躇なく奪えるのは、過去にあなたが感じている心の揺れを消化したからであり、あなたのいるステージとは別のステージにいるからです。
ただ、別のステージにいるからといって、先に進んでいるということではありません。
ステージは人の数だけ無限に存在します。
自分の立つステージにおいて自分なりに考え続けているかどうかが重要だと思います。
「動物の死を可哀想であると感じること」
これは人として自然な感情ではありますが、我々はしばしば他人を見て
「自分はこれだけ可哀想だと思っているのに、あいつは何も感じていないようだ」
と考えることがあります。
その点について他人とのギャップを感じた時、
「俺はこんなに思い悩んでいるのにお前は~!」という論争が起こったりします。
主にカエデのyoutubeでよく見かけますね
良くも悪くも他人は他人です。
特別の理由もなく他人の感情に必要以上に突っかかるのはスマートではないでしょう。まぁ私はときどきやるんですけどね
さて、この記事は猟師である私の経験談を元にしています。
仕事や趣味の一環として動物の命を奪う立場から優先順位を設定し、その上での考察となっています。
だからもしあなたと考えが違っても、優しみを持って意見をくださいね(*´ω`)
これから個別の殺傷方法について考察しますが、それを明確にするためにいくつかの前提条件を設けたいと思います。
猟師が狩猟で動物を殺すうえでの優先順位
私は動物を殺す方法を選択する時、以下の優先順位を設定しています。
1.安全であること
2.殺傷後、目的に沿った利用ができること
3.コストがかからないこと
4.狩猟対象を苦しめないこと
5.楽であること
猟師として狩猟をしているうちに自然と出来上がった優先順位であり、数字が小さいほど優先順位が高いです。
これが猟師全体の総意というわけではありませんので注意してください。
優先順位について簡単に説明します。
安全とコスト
猟師はたくさんの動物を狩猟します。
つまり、数をこなします。
だからこそ継続して狩猟を行うために”安全とコスト”が大切になってきます。予算がでるわけでもありません。
中でも安全は何よりも優先されるべきことです。
私も実践できているかと言われれば非常に怪しいのですが…。
狩猟後の利用、楽であること
そして、猟師は動物を殺すことを目的としてはいません。
目的はその先にあります。
仕留めた獲物の肉は美味しいジビエです。これが目的の人は多いでしょう。
肉が欲しいのに、下手に銃で吹き飛ばせば肉が損なわれることがあります。
無駄に暴れさせれば罠が破損したり、肉の質が落ちてしまいます。
駆除が目的なら肉のことを考える必要はありません。
しかし現場を荒らしてしまえば次の獲物が捕まらないし、後片付けをするのがとても大変です。
それら後の利用に差し支えないように、効率的に殺すことが求められます。
狩猟鳥獣を苦しめないこと
殺す事が決まったのなら、せめて苦しまない方法で殺してやりたい。
そう考えるのは自然なことです。
ただし、私は”苦しめないこと”を優先順位の下の方に設定しています。
動物を殺すシーンを含めて狩猟動画を作っている関係上、この問題については数えきれないほど意見をやり取りしてきました。
賛否があるのは当たり前のことです。
しかし実際に殺す側の立場からすれば、他にも考慮すべき事柄があり、難しい問題であるのも事実なのです。
例えばコストとリスクの問題です。
「コストを無視してでも可能な限り安楽死をさせるべきだ」
「多少危険でも動物が苦しまない方法で殺すべきだ」
という意見はあると思います。
私だってその考えをしなかったわけではありません。ですが…。
「では具体的にどこまでするか?何を根拠に苦しまないと判断するのか?予算をどこまで確保するのか?動物を苦しめないために自分が苦しむことになった場合どうするのか?」
そこまで尋ねて具体的な回答が得られたならば熟考に値します。
そのやり取りから2018年度に電気槍を導入したのも事実です。
しかし、返ってくるのが感情論ならば意見を変えることはできません。
まぁこの記事でこの問題についてどれだけ主張しても詮無き事なのですが…。
これ以上は愚痴になりますので次に進みます。
狩猟・駆除時の前提条件
山に野放しの動物相手に選択肢は限られます。
だいたいは銃殺になるでしょう。
今回は、すでに動物の動きを拘束している状況を想定します。
具体的には箱罠、あるいはそれに近い何かで拘束した状態であり、複数の選択肢がある場合においての殺し方の選択について考察します。
具体的な駆除の方法、殺し方
前置きが非常に長くなり申し訳ありません。
ここからは動物を殺すための具体的な方法について紹介していきます。
撲殺、昏倒させる
絞殺、撲殺を含む動画です。
ハンマー、鉄の棒などで頭を叩き昏倒させる方法です。
種類に限らず、狙うのは頭蓋骨、その下にある脳みそです。
鹿などの止めさしとしては最も頻度が高いのではないでしょうか。
鹿や猪は非常に頑丈で、頭蓋が陥没していても心臓が動いている場合があります。
難点は、頭を叩くためには動物の動きを拘束する必要があることです。
箱罠に棒を挿して動きを制限したり、首にワイヤーをかけて引っ張る必要があります。
命の有無に関わらず、食用のために素早い血抜きが推奨されるため、罠から出した後は速やかに喉を切ります。
意識がないという点で、後の処理に苦痛は伴わないでしょう。苦痛が表に現れないだけかもしれませんが、それを我々は知ることができません。
撲殺の利点
一瞬で昏倒させられる 汎用性が高い 罠内が血などで汚れない
撲殺の難点
拘束する必要がある 道具が多く必要、拘束ワイヤーとハンマーとナイフ 拘束までに肉が傷む可能性
絞殺による窒息死
ワイヤー等で首を絞め、窒息させる方法です。
窒息し意識が失われた後、素早く頭を叩くか喉を切ります。
意識が戻れば危険ですので、頭を叩くほうが良いでしょう。
撲殺とほぼ同じですが、引っ張るだけで意識を奪うのは相応の力が必要であり、私は鹿相手にしかやったことがありません。
絞殺の利点
罠内が血などで汚れない 拘束ワイヤーのみで〆が可能
絞殺の難点
拘束する必要がある 力と時間が必要であり、長く苦しめる可能性 大物には使えない 拘束までに肉が傷む可能性
刺殺による失血死
※画質が悪いです。
下の例はだいぶ時間がかかってしまっています。教えてもらいながらでした。
ナイフ、槍などにより傷をつける止めの方法です。
槍で狙うべきは正面から。前脚と前脚の間です。心臓を含む急所群があります。
槍の扱いは意外と難しいので、戦国時代のマンガとか読んで練習してください。
猪の皮は分厚いので、細く鋭利な先端を持つ槍がおすすめです。
刺殺は外部から比較的安全に行える方法です。
どの動物にも使えて道具も最小で済むため、山奥では主たる選択肢かと思います。
ただし、刺されてもテレビドラマのようにすぐ死ぬわけではありません。
心臓を貫かなければ長く苦しみ、下手をすれば血で溺れて窒息する場合もあります。
なお、失血死しても血抜きができているわけではありません。
しっかり血抜きをするなら、改めて吊るしたり、内臓を抜いて水に晒しましょう。
刺殺の利点
安全性が高い 汎用性が高く手軽である
刺殺の難点
肉、内臓を傷つける可能性 猟場が血で汚れる 素早い刺殺には技術が必要 失敗すれば長く苦しめる
銃殺
※↓は猟師初期の動画であり、あくまでも銃による止めの参考に留めて頂ければと思います。
散弾銃、あるいは空気銃によって動物を射止める方法です。
箱罠のメッシュを撃って跳弾しなように注意してください。
くくり罠、あるいは何らかの理由で危険が想定される場合の主たる選択肢です。
住宅地に近い場所に仕掛けた罠などで使用するのは必ずしも適切ではないでしょう。
箱罠に”捕獲”された時点からの止めさしでの発砲には、一部議論があるようです。現在のところ違法ではないようですが…。
当たり所によっては肉が抉れ、後の食用に悪影響が出る場合があります。
銃殺の利点
ほぼ確実に殺すことができる 全ての動物で使える
銃殺の難点
弾にコストがかかる 罠で捕獲した時点での銃殺は議論がある 場所を選ぶ 当たり所が悪ければ肉を損ね無駄に苦しめる 跳弾、背後の危険性
電殺 電気槍
電気槍、あるいは専用のスタンガンなどによる殺傷方法です。
必ず実績のある電気槍を使用しましょう。
よほどの専門知識がない限りは電気槍の自作をするべきではありません。
私は「狩研究会」の電殺機を使用しています。良い品です。
電気槍は威力が高く、猪であっても素早く昏倒させることが可能ですし、連続使用にも耐えます。
電気槍によって内部の肉が傷つくことは今のところありません。味も美味しく食べられます。
後の食用を考えても、使えるなら優先的に使うべき方法であると言えます。
近年では電気槍も進化し、道具一式は小型化され、安全性も信頼性も高まっています。
しかしまだまだコストが高い(10万円ほど)、雨天時に使用できない、持ち運びに若干の難がある、感電の危険は0にできない、故障のリスクがあるなど、まだまだ発展途上の方法であるとも言えるでしょう。
電殺の利点
素早い処理 肉を傷つけない 精神に優しい 動物の種類を問わない
電殺の難点
感電のリスク 取扱いの難しさがある コスト メンテナンス 導入までの障壁 汎用性が低い(雨天時、山奥への持ち込みの困難) 片付けが少し手間
溺殺 水に沈める
※↓実際の溺殺は次の動画ですが、年齢制限がかかっているためこちらを掲載しています。
ネズミ捕り罠にかかったネズミの殺し方代表。
昔のおじいちゃんなら大体やったことがある方法であり、田舎あるあるかもしれません。
私がアナグマに使用した際には多くの賛否を得た、個人的に因縁のある方法です。
大型の動物には使用できませんが、アナグマやハクビシンなど中型の動物を仕留めるには利点の多い方法でもあります。
罠を傷つけず危険もなくコストもかからず場所を選ばず、さらに冷却と血抜きを即座に行えます。
難点は、窒息まで分単位で時間が必要な点が挙げられます。
ただし殺すまでの苦痛の総量を考えると、他の選択肢よりは良心的であるかもしれません。
その判断を正しくできる人間は存在しませんので、あくまでも個人の意見ですが…。
メッシュの小さい罠では他の殺し方ができない場合が多いため、小型の罠では主たる選択肢に入ると思います。
電気槍を使用するにしても、罠の一部を開放する必要があり危険です。
溺殺の利点
安全 コストがかからない 後の肉利用に適している 小型罠で汎用性が高い 楽 罠が痛まない
溺殺の難点
大型動物には使用できない 窒息まで時間がかかる
小型の箱罠はアマゾンなどで購入できるこちらがおすすめです。ちょいと高いですが、錆びることなく5年は使えています。
以下、選択しないと思う方法
毒殺
詳しくありません。
炭酸ガスなどを使用すると聞いたことがありますが、狩猟鳥獣を殺せるほどの毒はちょっと…。
殺した後で食べられるのか? どこから入手する? ちょっとハードルが高いです。
焼殺、その他
可能かもしれないが、利点がないことはやらないです。
餓死、衰弱死
選択肢することはないですが、結果としてそうなってしまう可能性は残ります。
厳冬期の雨や雪に晒され、暴れたことによるケガが重なれば1日で命を失う可能性は0ではありません。
箱罠は1日1度は見回ることが基本ですが、仕事をしながらとなるとそれを確実に守ることは現実的に難しいものがあるかもしれません。
近所の人にそれとなく見てもらえるように頼むなど、なるべく早く気付けるようにする必要があります。
逃がすという選択肢
いかに有害鳥獣であったとしても、もし殺す義務があったとしても。
私は逃がすという選択肢があっても良いと思います。
覚悟がないなら、自分のためにも動物のためにも殺すべきではないです。
どのような意見があろうと、殺すことを決めるのは殺す人間であるべきです。
逃がしてやる気持ちが大きいのなら、それに従えばよいでしょう。
また気持ちが定まった時に捕まえれば良いのです。
推奨される止めさし まとめ
私の中で安全が第一であることは揺るぎないですが、それでも何を優先させるかは各々の自由であると思います。
常識や倫理観などは人の数だけ存在します。最後は法と自分の判断に従いましょう。
猪、鹿など大型動物については
電気槍が使用できる環境であれば電殺。
不可能ならば撲殺。
それも難しければ刺殺か銃殺を選択すると良いでしょう。
アナグマ、タヌキなど小型の狩猟鳥獣については
電気槍が使用できる環境であれば電殺。
箱罠が小型のもので、安全に電気槍が使用できないならば溺殺かその他の手段。
鳥、瀕死の鴨などについては
撲殺からの動脈の切断が良いでしょう。
グローブをしていれば瀕死の鳥相手に傷を負うことはほとんどありません。
素早く石やハンマーなどで頭を叩き、喉を切り血抜きを行います。
猟場において想定される状況は様々であるため、一律でこの方法が良いという選択はないと思います。
繰り返しになりますが私は 安全、後の利用、コスト、苦しめない、楽である の順で優先度を設定し、それに沿って選択しています。
この記事を読んだ方で、「この方法はどうなのか」「他にこの方法を選ぶべきである」という意見をお持ちの方は、ぜひ意見を寄せて頂ければと思います。
読んでいただきありがとうございました。
カエデ
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