私が猟師になって5年が経ちます。
今は猟友会に所属していますが、最初は猟友会に所属せず一人で狩猟をしたいなと考えていた時期がありました。
狩猟免許の手続きを進めてくると、普段何気なく見ている山も違った視点で見えるようになります。
ここでも狩猟ができるのか。ここも池があるし罠を仕掛けるにも良さそうだな。と考えます。
しかしその次に思うことが、「ここってもう他の猟師が使ってるんじゃないかな?」です。
猟友会に所属してからも
「どこそこの山は誰それグループの縄張りやから狩猟に入ったらあかんで」
などと先輩猟師に言われたことがあります。
私にはそれが冗談なのか本気で言っているのか理解できませんでした。
猟師の一人としてあまり話題にしたくはないことですが…。
今回は狩猟における猟師の縄張りについて話をしたいと思います。
※この記事は2分で読めます。
縄張りのようなものは存在する
結論から言います。
縄張りは存在しませんが、縄張り意識は存在します。
順番に説明していきますね。
法律上は縄張りなど存在しない
私が知る限り、日本の土地は必ず誰かの所有物です。
しかし、猟師はその枠を超えて狩猟をすることができます。
もちろん柵に囲まれた私有地はだめ、土地の所有者の意見が尊重されるなど制限はたくさんありますよ。
でも猟師の間だけで言えば、出猟が可能な区域において明確な縄張りを主張することはできません。
ですので極論を言えば、他の猟師がどう騒いでいようとも無視してしまえば問題がないのです。
ただ、それで解決!というわけではありませんよね。
猟場の縄張り意識が存在する理由は?
高齢化により猟師の数は年々減少していますが、それでも良い猟場ほど使いたい猟師が多いため、どうしてもそういった話がでてきます。
猟師の縄張り意識がどこから来るのか考えてみましょう。
自分たちの猟場だ、という意識
自分の住む家の裏山など、家の近くを中心に狩猟をしている猟師は多いです。
そうなると、感覚的には自分の土地も同じ。すでに自分の領域、庭となっているパターンですね。
地域に根差して自分の猟場に責任を持つ。それは良いことだと思いますが…。
既得権益を手放したくない
なだらかで歩きやすく、視界が開けており野生鳥獣が多く住み着いていて、さらに拠点から近く人里から離れており…などなど。
山は多くとも、そういった恵まれた猟場は意外と少ないものです。
そういった場所では自然に猟果もついてくるため、なるべく自分たちで独占したいと考えます。
危険を排除したい
巻き狩りを例に挙げてみましょう。
とある山の中で、複数の猟師が銃を構えて待ち伏せし、猟犬を山に放ちます。もしその中に他の猟師が紛れ込んでいたら…?
どう考えても危険ですよね。いくら明確に獲物であることを確認してから発砲することが義務付けられていても、猟師も人間であるため事故のリスクが生じてしまいます。
そういった危険を未然に防ぐために、他の猟師や一般の人に「あの山は鹿や猪が多いから、よくウチらのグループが入っとるんやで―」と吹聴するわけです。
くくり罠や箱罠を仕掛けているから
もしくくり罠を仕掛けている場所で猟犬を放した場合、猟犬が罠にかかってしまう恐れがあります。
箱罠の場合だと子供が誤って作動させて閉じ込められてしまったり、それ以外でも他の猟師が近くに出猟すれば獲物が寄り付かなくなってしまうかもしれません。
自分が罠を仕掛けている場所は、なるべく自分の管理下に置いておきたいと考えます。
先輩猟師の縄張り忠告は、半分は本気で言っている
猟師は皆、その土地を縄張りとして主張できないことをわかっています。
それでもけん制や既成事実の結果、緩やかにそういった暗黙の了解が形成されていくのです。
良い言い方をすれば譲り合い。悪い言い方をすれば談合でしょうか。
それは狩猟による事故や足の引っ張り合いをある程度防いでいるのは事実であり、悪いことばかりではありません。
長く猟師をやっているベテランほどそういった地元の狩猟事情に詳しく、だからこそ新人にそれを引っ掻きまわされたくないと思っています。
決して「型にはめてやろう」ということではありませんよ。
ただ、同じ地域で狩猟をする以上は、強制はできないけれどある程度の暗黙の約束を守ってほしい。ということです。
そういった微妙な事情を新人に伝えるとなると、どうしても微妙なニュアンスになってしまうのではないでしょうか。
「ほら…、わかるやろ?」
それは新人への忠告であり、親切心からのアドバイスでもあるのです。
先輩猟師のおじいちゃんというのは、新人を可愛がり世話を焼きたいと思いつつも、相手が自分の理解の及ぶ人物であるかを見定めようとしています。
猟師に限ったことではないですが。
緩やかに団結する集団に対して、個人でどういう態度をとっていくのか。
ここから先は個々人のスタンスによりますよね。
あ、他の猟師から嫌われたからといって、別に山から排除されたりはしないので安心してください。
基本的に猟場は有り余っているもので、近所の爺さんがなんか言ってる。くらいに捉えるのも良いかもしれません。
正直、自分にも縄張り意識がある
こうして記事をまとめていると、新米猟師の自分にも縄張り意識が存在したのだと気付かされます。
動物のナワバリのように、積極的に他人を排除したいと思うことはありません。ですが…。
自分がよく出猟する領場に他の猟師や一般の方が入ったら「嫌だな」と思います。
山ならば自分が箱罠を仕掛けている山に人が入れば獲物は獲れなくなるし、池でも一時間近く歩いてたどりついた秘密の猟場から鴨がいなくなっていたらやはり嫌なものです。
これって本人は無自覚でも、他人から見れば縄張り意識ですよね。
危ないから、効率が落ちるからなど、もっともな理由ならいくらでも付けることはできますが、やはり猟師を続けるうちにそういった認識が醸成されていくのは避けられないことなのかもしれません。
猟師に限らず、人間ってそういう生き物だと思います。
なのでそれを踏まえた上でどういう判断をするのが良いか考えてみましょう。
既存の猟場、縄張りに対しどう対処するか
縄張りというか、他の猟師が頻繁に出猟する場所の情報はありがたく仕入れましょう。
自分の知識を補完することにもはりますし、聞いておいて損はないです。
また、単独で忍び猟をしてみたいと考えている方はなるべく巻き狩りの多い猟場などに行かないことをおすすめします。
無駄な争いは避けましょう。
日本中に獲物は溢れています。楽しく自由に狩猟したいのに、面倒ないざこざを持ち込みたくはないですよね。
それでも主張がカチあったら…
縄張りなど本来は存在しないものなので、無視しましょう。
こちらが正しいのです。法律に従い堂々と出猟しましょう。
あとは若さと手数で勝負するとか…?
頻繁に出猟し、ここは自分の猟場だと主張するのです。マーキングです。わんわん。
言っておいて私はやるつもりがありませんが、選択肢の一つではあると思います。
犯罪には走らないようにしましょう。
箱罠の獲物を盗まれたことがあります。無念。
俺の庭で獲れた獲物は俺のものとでも言わんばかりですね。
他の猟師の話では、仕掛けた罠を勝手に解除されたりすることもあるようです。
自称ベテラン猟師の中にはそういった人がいることも事実ですが、私たちはそうならないようにしましょうね。
そういった猟場の情報は猟友会を通して手に入ることが多いです。
よければ以下の記事もご覧ください。
カエデ
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